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ジェノサイド ー 高野和明 [読書]

 今回のレビューは私が注目している作家の一人、高野和明さんの「ジェノサイド」です。

 この作品は2011年度の直木賞にノミネートされましたが、惜しくも池井戸潤さんの「下町ロケット」に負けてしまいました。非常に残念なことです。私が思うに、この作品はサッカーの表現でいうと「ワールドクラス」の小説です。寡読の私がいうと説得力がないかもしれませんが、今まで読んだ作品の中で三本の指に入るほどの傑作だと思っています。このブログでは本の少しのエッセンスだけ紹介したいと思います。なお、「下町ロケット」も素晴らしい小説なので、あとのブログで紹介する予定です。

 さて、ジェノサイドとはいったい何のことでしょうか? この言葉はホロコーストに対して使われたために「大量虐殺」の意味で使われることがほとんどのようです。私もその意味だと思っていました。ところが、Wikipediaを調べてみると「国外強制退去による国内の民族浄化、あるいは異民族、異文化、異宗教に対する強制的な同化政策による文化末梢……」とあります。この小説のジェノサイドはこちらの意味で使われているようです。

 物語は米国大統領の朝のブリーフィングで提出された大統領日報の最後のページからはじまる。そのタイトルは「人類絶滅の可能性 アフリカに新種の生物出現」というハリウッド映画のようなものだった。その可能性については過去に「ハイズマン・レポート」で示されていて、そのレポートに記された可能性とは?

 その頃、創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人に先日急死したばかりの父親から謎のメールが届く。そして起動しないコンピュータを手に入れる。研人はわけの分からないまま難病の子供たちを救うために父親の創薬プロジェクトを引き継ぐが、謎の組織や警察からも追跡されるはめに陥る。


 同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。その任務とはコンゴの山奥に住む少数民族が病原菌を媒介しているため、彼らを抹殺することだった。


 人類のものとは思えないような進んだ創薬アプリケーションを手に入れ、命の危険を顧みずに研究をすすめる研人。コンゴの山奥で謎の生物に遭遇し、政府に騙されたことを知り、方向転換を余儀なくされてゲリラとプレデター(無人爆撃機)から追われるイエーガー。
 そして、インターネット越しに行われる要人の殺害。日本にひそみ、研人とイエーガーに指示を送る謎の人物。点と線が徐々に交わり、物語は終局へと向かう。
 はたして研人は創薬に成功し、難病の子供たちを救うことだ出きるのだろうか? イエーガーは無事にコンゴの山奥から脱出できるのだろうか?


 全体を通してスリル満点の展開です。だからといって、外国の小説にありがちなジェットコースター小説とも違い、創薬の難しい話などを端折ったりはしていません。強いてあげるならばマイクル・クライトンを彷彿とさせる、いやそれ以上のエンターテインメント小説だといえます。

 高野和明の珠玉の一冊「ジェノサイド」、「超弩級のエンターテインメント」という触れ込みに偽りなしの逸品です。




ジェノサイド

ジェノサイド

  • 作者: 高野 和明
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/30
  • メディア: 単行本



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タグ:読書
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